狭小空間におけるLighthouseトラッキング最適化のためのベースステーション2.0マウント制作
最終型(ジェネレーティブデザイン版)
目的
8畳間という限られた空間において、HTC VIVEのLighthouse 2.0ベースステーションを公式推奨最大角度(-35°)で最適に設置するための金具を、3Dプリンターとジェネレーティブデザインを活用して自作。
成果
高精度トラッキング環境を構築
ジェネレーティブデザインを活用した軽量かつ高剛性な構造
トライアンドエラーによる設計最適化(V0〜V4)
3Dプリントにおける設計では、従来の加工、製造手法とは異なり、形状の自由度が飛躍的に高く、内部構造や空間配置の最適化が可能である。この特徴を最大限に活かすために、構造最適化やジェネレーティブデザインといったアルゴリズム設計手法の導入は不可欠である。
特に、FDM(Fused Deposition Modeling)方式では、材料を積層して成形するというプロセス上、内部を低密度にしつつ、外部を強固なシェル構造とする「外部骨格的(exoskeleton)な設計」が作成しやすい。このような構造は、特定方向への重量剛性比の改善が実現できるため、3Dプリンターとの相乗効果が極めて高い。
その上、ジェネレーティブデザインによって生成された有機的なトラス構造、外殻形状は、FDMプリンターで効率的に製造可能であり、造形強度の確保と材料コストの削減、製造時間の短縮を同時に達成できる。
このように、FDMの構造的特性と、設計自動化技術の融合により、機能性・製造性・経済性を高次元でバランスさせた製品開発が可能となる。特に試作フェーズにおいては、迅速な設計検証とフィードバックループの構築に貢献し、開発全体の効率化に寄与する。
HTC VIVEのLighthouseシステムは、IMUやインサイドアウト方式では実現不可能な高精度・低遅延トラッキングを提供する。しかし、以下の課題が発生
8畳間の四隅に取り付ける必要があり、付属マウントでは推奨角度(-35°)に対応不可
トラッキングの「ズレ・ロスト」が発生し、VR体験の没入感を阻害
市販金具では空間や角度条件に合致する製品が存在しない
3D CAD
Autodesk Fusion
スライサー
Ultimaker Cura
3Dプリンター
Flashforge Adventurer 3X
設計手法
シェイプ最適化、ジェネレーティブデザイン(V3以降)
-35°の固定角度に保持
1/4インチネジ穴と互換
高い剛性と耐荷重性能
角材(縦幅4cm)への取り付け対応
PLAフィラメント使用
短時間で印刷可能な構造
【設計方針】力学的最適解に重点を置いて設計
【結果】高剛性、軽量、低サポート材
【課題】固定困難、設置不可
【要改善点】設置可能にする
【設計方針】寸法修正、装着性の改善
【結果】装着可能
【課題】低剛性、破損リスク、固定時の歪み問題
【要改善点】歪問題に対処する為、片側2点支持方式にするべきと感じる。
【設計方針】片側2点支持方式による剛性向上
【結果】低サポート材、手で破損させるのが不可能な程高剛性
【課題】サポート材の固着が顕著、設置自由度が低い
【要改善点】左右対称2点止めが必要
【設計方針】左右対称2点止めに対応
【結果】滑らかな構造美、高強度、軽量
【課題】印刷未完了(フィラメント不足)
【要改善点】サポート材の低減、造形物の簡略化
【目的】サポート材の最小化
【結果】高剛性、低サポート材、軽量
【課題】印刷未完了(フィラメント不足)
【要改善点】不明
ノズル径
0.4mm(Wall厚さ: 0.8mm)
インフィル密度
10%(Gyroidパターン)
サポート材
生成有効(オーバーハング角度: 48°)
スライスプロファイル
standard-0.2mm
速度重視の設定。
3D設計スキル
ジェネレーティブデザインのノウハウの獲得
プロトタイピング技法
試作サイクルの最適化と反復改良の実践
ジェネレーティブデザイン
設計美・構造最適化を両立するAI設計の応用
VR環境最適化
限られた空間でも快適なトラッキングを構築する工夫
今後の展望
ジェネレーティブデザイン手法のノウハウを蓄積し、装飾品など他のプロダクトへの応用を試みたい。